ライフラインの中で最も重要とされる「水」。
水を供給する水道は人が生活する上で欠かすことのできない設備です。

しかし、水道止水栓から水栓までの導管をつなぐ「配管」にスポットが当たることは多くありません。

自由に選ぶことができる建材でありながら、配管について自ら調べて選ぶ施主は、ごく少数派といえるでしょう。

水道配管設備は「住宅の血管」とも表現できる重要な建材です。
配管の選び方の重要性について、広く認知されることが望まれています。
 

日本で主流となっている架橋ポリエチレン管

現在の日本においては、住宅内部の給水給湯配管に架橋ポリエチレン管が多く使われています。

架橋ポリエチレン管は軽量で柔軟性があり、さや管工法による管の更新が可能です。仕様面についても耐熱性や耐食性を持つことから、給水給湯配管に適した素材として普及してきました。

しかし、架橋ポリエチレン管はメリットばかりではなく、積極的な活用には慎重を要します。
 

1:有機溶剤、防蟻剤の管内透過

架橋ポリエチレン管は樹脂素材だけで作られており、有機溶剤の配管内部への透過浸透を防ぐことができません。

有機溶剤とは、防蟻剤のような薬品、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、灯油、ガソリンなど、人体に有害とされるものです。
微量であっても、有害物質が水道水に混入するのは不安と感じる人が大半でしょう。

2:曲げ加工性

架橋ポリエチレン管は巻き癖が残るため、管があばれてしまいます。
施工者にとっても扱いにくく、施工性が良いとはいえません。

3:温度変化に弱い

架橋ポリエチレン管は耐熱性があるものの、急激な温度変化で管が蛇行し、元に戻らなくなるという性質を持っています。

このような現象を繰り返すと、配管の変形やたわみが悪化し、配管の寿命が短くなる恐れもあるのです。

また、配管の変形やたわみは水圧に影響を及ぼし、ウォーターハンマー現象を引き起こしかねません。

ウォーターハンマー現象とは、水圧の急激な変化によって起きる異音や衝撃のことです。
勢いよく使っていた水を急に止めたときに「ゴン」と異音を生じることがありますが、この異音はウォーターハンマー現象と考えられます。

また、異音だけでなく衝撃も伴うので、パイプやツギテの破損、給湯器や洗濯機の故障につながることもあり、注意を要する現象です。
 

欧州でトップシェアを誇るアルミ複合ポリエチレン管

日本では架橋ポリエチレン管が普及している一方、海外ではアルミ複合ポリエチレン管が広く使われており、欧州では配管のトップシェアを誇る建材です。

アルミ複合ポリエチレン管は、内層と外層は架橋ポリエチレン管ですが、その間にアルミニウム層を挟んだ構造です。
アルミニウム層があることにより、架橋ポリエチレン管3つのデメリットをカバーしています。

認知度


世界で広く使われているアルミ複合ポリエチレン管が、日本ではあまり普及していません。

まず、挙げられるのは認知度が低いという問題です。
それはアルミ複合ポリエチレン管が知られていない、という問題だけではありません。

そもそも「水道配管設備にも選択肢がある」ということを知っている施主は少ないのではないでしょうか。

水道メーターから下流側の給水装置や配管設備は施主の所有物であり、「水道配管設備は個人で選べるもの」と認識されることが大切です。

次に、建築費予算の配分についても考える必要があります。
水道配管は目に見えにくい設備であり、施主の意識を向けることは容易ではありません。

しかし、本来は配管や断熱材など「リフォームが困難な建材」にこそ、コストをかけるべきなのです。

どこにコストをかけるべきか、設計者や専門家の助言は、施主にとって家づくりの大きな助けとなるでしょう。

 

アルミ複合ポリエチレン管「アルミックス」とは

日本においても、アルミ複合ポリエチレン管による配管設計は広がりを見せています。
ここでは当社の給水給湯配管システム「アルミックス」の特長をご紹介します。

特長1:アルミ層を含む5層構造

アルミックスは、内層に耐熱性のある架橋ポリエチレン管、次にアルミニウムによるバリア層、外層を架橋ポリエチレン管で保護し、それぞれの間に接着性樹脂層を設けた5層構造です。

アルミニウム層が有機溶剤の配管内への透過を防ぎ、架橋ポリエチレンの内層は腐食が起きず、常に安全で清潔な水を運びます。
架橋ポリエチレンとアルミニウム、それぞれの特長を最大限に活かしたハイブリッドな建材です。

特長2:長寿命

アルミックスの設計耐用年数は約50年(温度70℃設計水圧1MPaの場合)。
水道という重要なライフラインを長期に渡って守る安心設計です。

特長3:温度変化への強さ

アルミックスは、架橋ポリエチレン管をアルミニウム層で保護しているので、熱による温度伸縮がほとんど起こりません。

温度変化を繰り返しても変形したり、たわんだりすることは少なく、水の流れを正常に保ち続けます。

特長4:形状保持性能と曲げ性能

アルミックスには形状保持性能があり、架橋ポリエチレン管のように配管のスプリングバック(曲げ戻し)がありません。

簡単に折り曲げることもでき、折り曲げた形状は維持することができます。
配管がおどらないので施工しやすく、施工者にとっても扱いやすい建材です。

また、アルミックスは曲げ性能にも優れています。工具を使うと曲げ半径をより小さくすることができ、省スペースでの配管も可能です。

特長5:選べるツギテ

アルミックスのツギテは、ワンタッチタイプとカシメタイプの2タイプ。

ワンタッチツギテはパイプを差し込むだけの簡単施工です。ツギテカバーが透明樹脂でできており、挿入状態を目視することができます。

カシメツギテはプレス式ツギテとも呼ばれ、欧州ではプレス式ツギテが約7割を占めるといわれています。専用工具でプレスするので、しっかりと圧着接合することができる方法です。

配管材質と配管工法の選び方で、水環境は大きく変わります。
最終的な選択は施主の判断に委ねられますが、安心安全でストレスフリーな水環境の提案は、施主にとって満足度の高いものとなるでしょう。

快適性に影響する配管工法

朝や夕方は水の使用量が増えますが、家族の人数が多いほどその傾向は顕著になります。

水やお湯の使用量が増えると起きやすいのが、お風呂やキッチンの同時使用によるトラブル。
お風呂でお湯を使いたいのに、湯量が少ない、お湯が急に冷たくなる、誰もが一度は経験のあることではないでしょうか。

水量や湯量が不安定になる原因は配管工法にあります。

先分岐工法

従来から行われてきた配管工法が先分岐工法です。
先分岐工法では、キッチン・洗面・お風呂など複数の設備でひとつの配管を共有している状態になります。

「配管の共有」によって、同時使用の際に流量に影響を及ぼしやすくなるのです。

また、キッチンなどの設備がある場所で配管の分岐を行うので、必然的に接続箇所が多くなります。その数だけ漏水のリスクが増えてしまうともいえるでしょう。

ヘッダー工法

ヘッダー工法とは、ヘッダーと呼ばれる装置で給水・給湯を一元管理する配管工法です。
ヘッダーに配管を接続し、各設備の水栓器具に分配していきます。

ヘッダー工法のメリットは、水圧を一定に保てることです。配管の共有が起きないので、水を同時に使用しても安定した水量を保つことができます。

また、ヘッダー工法は接続箇所がヘッダー部と水栓部だけになるので、漏水の危険も少なく、メンテナンスや維持管理の上でも役立つ工法です。

ヘッダー工法使用例

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