家具や食器、洋服など身近なところで「黒」を選ぶ方が増えていると感じます。
黒のイメージといえば「ダーク」で「力強い」「男性的」などが思い浮かびますが、最近は、質感や見せ方などによって、より繊細な雰囲気を醸しながら暮らしに溶け込んでいます。
今回は、洗練された黒の使い方をご紹介していきたいと思います。
 

黒の効果

黒は、形によってはシャープな印象を与えてくれたり、質感によっては高級感も与えてくれたりするなど、使い方によってさまざまな表情に映ります。
一般的には、細見に見えたり、物体のシルエットをくっきりと浮かび上がらせたり、落ち着きを与えるといった効果があります。
 

木目と相性がいい

黒と木目はとても相性がよく、お互いが主張することなく馴染んでいます。
木目の中でもウォールナットのような濃い色調と組み合わせると、落ち着いた雰囲気でシックな空間をつくることができます。

 
たとえば、木目の天板と黒のアイアンの脚を組み合わせたダイニングテーブルは、全体を木材で造るよりも、黒のアクセントが効いて洗練された印象になります。
脚の太さを変えることでテーブルの印象もまた異なります。

ナチュラルな淡い木目なら、階段手すりや照明器具などに黒を取り入れることで、柔らかい温もりの中にもキリっと締まった雰囲気の空間になります。
木目の中にアクセントとして黒を取り入れることで、重厚感や高級感も感じさせてくれます。

「木」の質感を好む場合でも、家具や造作材を木目だけで仕上げると、ときにログハウス調の雰囲気になることもあります。そんな時でも黒を取り入れることでグッと引き締まります。さりげない演出をしてくれる黒子のような役割をしてくれます。

 

黒は質感で印象が変わる

黒といっても、その質感によって印象はガラリと変わります。
マットな黒、艶のある黒、ここに素材そのものの質感も加わることで、地味に見えたりときに派手に見えることもあります。

特に、光沢のある黒は、使う場所や面積によっては、少し主張しすぎることもあります。
そのため、1箇所だけ遊びとして加えるなど全体のイメージを壊さないようなバランスがおすすめです。

光沢のある黒といえば、日本には漆の器があります。
伝統的な造りの和室の襖縁(ふすまふち)にも漆塗りが使われています。
柔らかい印象の白木の空間の中で、黒い漆塗りの襖縁は凛とした緊張感を感じさせます。
白木と黒の漆塗りは、一見すると漆塗りが主張しすぎるのでは?と思われがちですが、実際の空間を見ると見事に調和されていて、日本の「粋」が凝縮されている気がします。

マットな黒では、つや消しブラックで塗装されたアイアン手すりやフェンス、漆黒の陶器素材の手洗い鉢などがあります。光沢のある黒とは違いマットな黒はインテリアに取り入れても控えめな印象です。マットな黒の方が、素材の質感がよりわかりやすいともいえますので、素朴感を出したいのか、重厚感を出したいのか目的によって使い分けることがポイントです。
 

キッチンやバスルームでの使い方

では、実際に住まいの中に黒を取り入れるには、どのような使い方があるでしょうか。

住まいのイメージにもよりますが、黒を主張しすぎず、それでいて存在感をしっかりと感じるには、住宅設備などで、アクセントとして取り入れるのが効果的です。
 

キッチン

たとえばキッチンの水栓に黒を取り入れてみましょう。木目やタイルなど周囲の質感との組み合わせにより、黒い水栓が個性的でありながらも主張しすぎることなく、さりげない存在感を放ちます。

一般的な水栓のイメージは、クロムメッキやゴールドなど、ピカピカと艶のある「器具」としての存在であり、ときに冷ややかな印象を与えます。木製のアイライドキッチンなど、キッチンが家具のようにリビングダイニングに溶け込むキッチンスタイルが好まれてきていますが、水栓がクロムメッキだと、そこだけは「器具」そのものを印象づけます。

黒の水栓を取り入れることで、従来の冷ややかさを払拭し、黒がもたらす引き締まった印象を与えることができます。キッチン天板や周辺に使われる素材が、木目やタイル、大理石など落ち着きのある色調だったり、表情豊かな質感だったりすると、黒との組み合わせとして、とても相性がよく、より効果的に上質な雰囲気を造り出せるでしょう。
 

バスルーム

バスルームでは、洗い場の水栓やシャワーヘッド、オーバーヘッドシャワーなどに黒を取り入れてみましょう。今までの概念とは違う重厚感やスタイリッシュな雰囲気が生まれます。

バスルームも一般的な水栓のイメージはクロムメッキです。バスルームに透明感のあるタイルや白い浴槽などを取り入れる場合は、クロムメッキの水栓でも組み合わせとしては悪くありません。むしろクールなカッコ良さを演出することができます。ただ、クールに映ることで、少し冷ややかさ感じさせることがあります。

黒の水栓やシャワーヘッドを取り入れることで、落ち着きのある色調のバスルームなら、よりシックな印象になります。控えめな存在感を放つ水栓は、悠々と空間の心地よさを感じるでしょう。

ガラスで仕切られたバスルームなら、ガラス扉の枠に黒を取り入れることによって、引き締め効果が得られます。バスルームとつながる洗面所の壁に「白」を採用する場合、バスルームの扉の枠は「白」あるいは「クロムメッキ」を採用するのが無難な組み合わせです。爽やかさやクールさを求めるなら、マッチした組み合わせといえます。

もし、重厚感や粋な演出を求めるなら、扉の枠に「黒」を取り入れることで、空間がキリっと引き締まり、今までの概念とは少し違った個性的な空間を表現することができます。上述で触れた、襖縁と見せ方の効果は似ているともいえます。

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