自然豊かな環境に宿泊施設などを企画開発・運営し、地域ブランディングを手掛ける『株式会社DAICHI』。「能動的ラグジュアリー」をコンセプトに掲げ、自然との融合を体感できる施設を次々に構築しています。
この注目企業が新たに始動させた会員制貸別荘サービス「DAICHI ISUMI」。理想とする空間づくりにおけるこだわりについて、DAICHIの代表でありプロジェクトマネージャーの馬屋原竜さんにお話を伺いました。
コンセプトは「建築」×「自然環境」×「体験」
DAICHIは、馬屋原さんをはじめ、建築家・起業家の谷尻誠さん、造園家・グリーンディレクターの齊藤太一さん、クリエイティブディレクターの木本梨絵さんらが参画するプロジェクト。コロナ禍により人々のライフスタイルが変化する中、密を回避できる『外』の価値観が高まっているという世の中の流れを踏まえて、「豊かな自然の中でその場でしか味わえない特別な体験を提供したい」という思いからスタートしました。
元々アウトドア好きだったという馬屋原さん。普段から季節問わず年間何十泊とキャンプに出掛けているとのことで、同じく夏はキャンプ・冬はスノーボードと週末には外に飛び出す生活を送っているという谷尻さんとの協働プロジェクトにおいて「自然」というコンセプトはごく当たり前に掲げられました。
では、具体的に、どのようにしてビジネスに落とし込んでいくのか。それを考えたとき、「Nature Development」というキャッチーなワードが挙がりました。一般的に“development”とは都市部を対象としてより便利に豊かにという意味で用いられますが、土地のポテンシャルとしては低いと考えられていた場所に「建築」「自然環境」「体験」という3つのアイテムを掛け合わせることで、その場所自体の価値を高めていけるのではないかと考えたのです。
「都市部における便利さとは対極に、自然には不自由や不便がつきまといます。
でも、そんな中でも、外で食べるご飯やお酒が美味しかったり、星が綺麗だったりと、また違った発見があり、豊かさを得ることができるんです。
自然に目を向け、魅力を広げる。
これが『Nature Development事業』の大きな基軸となっています」
自然環境と一体化する空間。地階にはサウナも
外と中の空間が連続するリビングダイニングスペース
『能動的ラグジュアリー』という新しい価値観
会員制貸別荘の第1弾となる場所は当初から千葉県いすみ市に。都心から1時間弱というアクセスの良さに加え、海や森もすぐそばにあり、サーフィンやゴルフ、乗馬といったアクティビティも豊富。いすみ米をはじめ農作物もたくさん採れ、勝浦漁港も近いという食の豊かさもあり、地の利の良さでこのプロジェクトにおいては最適なベンチマークになると考えました。
施設に一歩足を踏み入れると、そこは自然と一体化した特別なプライベート空間。大きな開口によって屋内と屋外がシームレスにつながり、開かれたテラスの目の前に流れる川の景色が広がっています。
「実はここ、地鎮祭の段階では、普通の雑木林だったんですが、対岸の景色を楽しむことを見越して枝葉を整備するなど、自然にあるものを生かした設計を施しました。
それができるのは建築家と造園家のタッグだからこそ。この空間に勝てるものはかなり少ないと思いますよ」
目の前を流れる夷隅川(いすみがわ)を望みながらの外気浴は最高
DAICHIが展開する宿泊施設の立ち位置は“キャンプ以上、別荘未満”だといいます。キャンプを、テントの設営や片付けを自ら行う『能動的カジュアル』とするならば、別荘やホテルは予め用意されているサービスを受け取る『受動的ラグジュアリー』。その中間の領域として、自然の中に身を置きたいと思いつつも、前者には道具の準備等でハードルの高さや水まわりの快適性に不安を感じ、後者では物足りない…という層に向けて提案したいのが、『能動的ラグジュアリー』という新しい価値観です。
例えば、この施設には冷房設備はありません。理由は、窓を閉めることによって“外との親密性”が遮断されてしまうからです。敢えてリモコン一つで空調が管理できてしまう環境にはせず、暑ければ大きく窓を開け、目の前にあるプールに足をつけて体を冷やし、寒い時は薪ストーブに火をつけて部屋全体が暖まるのを待ちます。便利なハードやソフトをあえてカットし、自然と一体化した空間だからこそ味わえる貴重な体験を、真のラグジュアリーとして提供する施設なのです。
「金曜日の夜に東京を出て週末をこの施設で過ごし、月曜日の午前中に東京に戻るのも良し。
逆に、平日はここで仕事をして、週末は東京で家族と過ごすのも良し。
そんな自由で新しい二拠点生活を提案したいと思っています」
開口部を大きくすることで外との親密性が高まる
水まわりは引き算一切なしの『ベスト』な状態
DAICHIが手がける施設の設備は、本来は必要ないかもしれないモノやコトを、「引き算」して削ぎ落としていくという考え方が基本です。しかし、そんな中でも水まわりに関してだけは、逆に必要であれば「足し算」し、ベストな状態を作り上げることにこだわりました。
キッチンや洗面、お風呂などはそれぞれに独立させ、広々としたスペースが確保されています。洗面は、あえて2台設置。メイクや洗顔・ドライヤーなどに時間を取りたい女性が、他の家族の順番待ちを気にせずゆっくり使えるようにとの配慮です。また、シャワーはホテルなどで見かけるタイプの上部に固定されたオーバーヘッド型を採用するなど、自宅で過ごす以上の特別感が味わえる贅沢なつくりになっています。
そしてそれらは、自然に溶け込むシンプルなデザインに。景色や風景との関係性を邪魔しない、それでいて使用していない時にも絵になるスタイリッシュさを兼ね備えています。こうした理想的な条件を全てクリアしているとして選ばれた水栓器具が、SANEIの『cye』シリーズでした。
「“気に入った”というより、求める条件が揃っている水栓器具は『cye』シリーズをおいて他になかったんです。
主張しすぎないけれど丸みやエッジも効いていて、水栓でありながら水栓っぽさを感じない。
なおかつ、凹凸が少ないため水が溜まりにくく、手入れもしやすい。
まさにこの施設にぴったりのスペックを兼ね揃えていました」
非日常な空間だからこそ、充実した水まわりが必要
たっぷりの湯量で贅沢感を味わえるオーバーヘッドのシャワー
『キレイを保ちたい』と思える場所であり続ける
今後の運営管理にあたっては、利用者からのフィードバック一つ一つを取捨選択しながら常にアップグレードしていく予定です。特に水まわりに関しては常に清潔であることが必須。
どんなにいい宿泊施設であっても、水まわりが汚れているとその価値は下がってしまうと思います。
「例えば、訪れた施設のシンクやシャワーが汚れて雑多な状態だったら、雑に使っていいんだと思いますよね。
逆に写真を撮りたいくらいキレイだと、その状態を保ちたいという気持ちが生まれます。
『cye』の水栓はそういった意味でも一役買ってくれているんです。
一般のお客様だけでなくプロの目から見ても『妥協していないな』『いつ来てもピカピカだな』と思わせるクオリティを保持することが大切だと考えています」
施設の心地よさはもちろんですが、この空間において建築物はあくまで自然や景色を生かすための装置。この施設を訪れる際には、ここだからこそ得られる体験や自然の豊かさを享受してほしいと馬屋原さんは言います。自然の中で “暑い”“寒い”“美しい”といった当たり前の感覚を受け取れる場所、習慣や時間に縛られず、天気や気候によって滞在者がそれぞれの過ごし方を自らデザインできる場所、それが「DAICHI ISUMI」なのです。
この施設を皮切りに、DAICHIは日本全国に自然豊かな場所を発掘し、土地に潜むポテンシャルを最大限に引き出す空間と体験価値を得られる施設づくりを広げていく予定です。
シンプルなデザインかつ自然の彩色に溶け込むブラックカラーの水栓
会社名:株式会社DAICHI
所在地:東京都世田谷区等々力2丁目38-27 2F
代表:馬屋原 竜
設立:2020年9月
主な事業:ネイチャーデベロップメント事業、宿泊運営事業、ストア運営事業